子ども同士のやり取りを見ていると、
「けんかになる前に止めたほうがいいかな」
「何か言ったほうがいいかな」
と迷うことがあります。
私も、子どもたちの様子を見ながら、つい口を出したくなることがあります。
見守るって、どこまで見ていたらいいんだろう。
ただ黙って見ているだけでいいのかな。
それとも、何か声をかけたほうがいいのかな。
私自身、よく分からずにいました。
そんな私がある日、娘と弟のやり取りを何も言わずに見ていたら、思いがけない娘の姿を見ることができました。
「ああ、見守るって、こういうことなのかもしれない」
私の中に、「まずは少し待ってみる」という選択肢が増えた日のことをお話しします。
「また取り合いになるかな」と身構えていた私
ある日、1歳半の弟がクレヨンを使っていました。
すると、4歳の娘が、
「青、か・し・て!」
と声をかけました。
けれど弟は、まだ娘の言っていることがよく分からない様子。
きょとんとしていて、娘の「貸して」はまったく通じていませんでした。
私はその様子を見ながら、
「また取り合いになるかな……」
と、心の中で身構えていました。
娘が青いクレヨンを取ろうとするかな。
弟が怒るかな。
何か言ったほうがいいかな。
そんなことを考えながら見ていたのですが、そのときはまだ何も言わずにいました。
すると娘は、青いクレヨンを奪うでもなく、怒るでもなく、少しだけ間をおいて――
別の色のクレヨンを手に取り、そのまま絵を描き始めたんです。
「あれ?」
私は少し驚きました。
青が使えなかったから、自分で違う色を選んだ。
私が何か言う前に、娘は自分で次にどうするかを選んでいたんです。
何も言わずに待っていたら、娘が自分で選んだ
もしあのとき、私がすぐに、
「今は弟が使ってるよ」
「違う色にしたら?」
と言っていたら、娘がどうしていたのかは分かりません。
ただ、あの日は私が何も言わずに少し待っていたからこそ、
「思いどおりにならなかったとき、娘は自分で違うものを選ぶこともあるんだ」
という姿を見ることができました。
私はそれまで、「見守る」ということが、いまひとつ分かっていませんでした。
何もせず、ただ黙って見ていることなのかな。
それで本当にいいのかな。
そんなふうに思うこともありました。
けれど、娘が別のクレヨンを手に取る姿を見て、
見守るって、すぐに答えを渡さず、ほんの少し待ってみることでもあるのかもしれない。
そう思ったんです。
もちろん、いつでも待てばいいということではありません。
危ないときや、助けが必要なときには手を差し伸べたい。
ただ、急いで答えを渡さなくてもよさそうなときには、ほんのひと呼吸だけ待ってみる。
それだけで、私がまだ知らなかった子どもの姿に出会えることもあるんだなと思いました。
その場で言えなかった「見てたよ」を、翌朝伝えた
娘が違う色のクレヨンを選んだとき、私はその場ですぐに声をかけませんでした。
娘が夢中になって絵を描き始めたので、止めたくなかったんです。
「あとで伝えよう」
そう思っていたのですが、うっかりその日はそのまま終わってしまいました。
翌朝になって、ふと思い出しました。
そこで娘に、
「昨日、青が使えなかったのに、違う色で描いたでしょう。あれ、すごく素敵だったよ」
と伝えてみました。
すると娘は、少し照れたように笑って、
「うん。でもレンくんが終わったあと、エリカも使ったよ」
と教えてくれました。
「ああ、ちゃんと青も使えたんだ」
私はなんだかうれしくなりました。
そして、娘は昨日のことをちゃんと覚えていたんだな、とも思いました。
その場ですぐに「素敵だったね」と言えなかったけれど、翌朝になって私は伝えることができた。
それなら、その瞬間にうまく言葉をかけられなくても、思い出したときに伝えればいいのかもしれない。
そう思うと、私自身の気持ちも少しラクになりました。
毎回、子どもの行動にその場ですぐ気づいて、ぴったりの言葉をかけるなんて、私にはなかなかできません。
それでも、
「あのとき、ちゃんと見ていたよ」
と思ったことを、あとから渡すこともできる。
私はそれでいいのかもしれないな、と思いました。
見守るって、「まず少し待ってみる」ことなのかもしれない
あの日のことがあってから、子どもたちのやり取りを見たとき、私の中に一つ選択肢が増えました。
「何か言ったほうがいいかな」
と思ったときに、すぐに口を出すのではなく、
「ちょっと待ってみようかな」
と思うこと。
もちろん、危ないときや助けが必要なときは別です。
ただ、すぐに答えを渡さなくてもよさそうなら、ほんのひと呼吸ぶん待ってみる。
見守るって難しいことだと思っていたけれど、私は娘の姿を見て、そこからでもいいのかもしれないと思うようになりました。
今日もきっと、子どもたちを見ながら迷うことがあると思います。
そんなときは、あの日、違う色のクレヨンを手に取った娘の姿を思い出して、
「ちょっと待ってみようかな」
と思っています。
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